離れていても、できること。
頼れる妹&ぽんこつ姉の遠距離サポート奮闘記

母の認知症

小さな変化が教えてくれること・①大好きだった趣味をやめてしまう

小さな変化が教えてくれること・①大好きだった趣味をやめてしまう
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こんなことを書いています

ある日、母が長年夢中になっていた趣味を辞めたことを聞かされたとき、、、
遠距離に住んでいても、もう少し早く気づいて寄り添うことができたはず、、
なぜ大好きだったはずの趣味を手放したのか、どんなサインがあったのか、そして家族としてどんなサポートができたのか。
趣味を通じて見える「意欲低下の兆し」から「寄り添い方のヒント」までをまとめました。

いつもの“楽しみ”が遠ざかる瞬間

母の異変に気付き、毎年帰省するようになって2~3年したころ、大好きだった趣味を辞めてしまったことを知りました。

仕事を定年前に辞めたのも、この趣味に没頭するためだったので、かれこれ10年以上はまっていた趣味でした。

あんなにのめりこんでいたのに、こんなにあっさり辞めてしまうなんて、、、
と、その時はびっくりし、残念に思ったことを覚えています。

私の心の中で、この趣味を続けている限り母は元気だと思っていたので、結構ショックでした。

母の趣味

母は仕事がらも影響してか、ものつくりが好きでした。

編み物やろうけつ染め、油絵やニードルパンチで作るマットなど、私が子供のころに教えてもらって一緒にした記憶があります。

また、音楽や美術といった芸術も好きで、私が子どものころは時々コンサートや美術館に連れて行ってもらいました。

始めるとのめり込むタイプで、やりたいことはいくつかあるけど、仕事をしていた頃はなかなか時間もとれなかったんだと思います。

一つの趣味を10年サイクルで楽しむ!みたいなことを言っていた記憶があります。

仕事を退職する前は日本舞踊、仕事を退職してからは七宝焼きにはまっていました。

日本舞踊

詳しいことはわからないのですが、祖母が日本舞踊の先生だったようで、子どもの頃に少し習っていたようです。

大人になってから(私が子供の頃)はまったくしてなくて、そのことすら知りませんでした。

子育てがひと段落したところで再開したようです。
ちょうど母が50代のころでしょうか。

何かの会に入って発表会や舞台に出たり、自分でも教えたりして楽しそうな様子を聞いて私も嬉しかった記憶があります。

昭和の時代に仕事と子育てを頑張っていた母は、子ども心にいつも忙しそうで、でも子供にもしっかり向き合ってくれて、私自身いつの頃からか母のように仕事も家庭も頑張りたいなぁと思うようになっていました。

私の長女が2~3歳頃帰省した時には、楽しそうに教えて楽しんでいました。

七宝焼き

これは趣味というより、もう母のライフワークといてよいほどはまっていました。

始めたのはたぶん退職する前と思いますが、これを本格的にするために早期退職したといっても過言ではありません。

最初はアクセサリーや小さなものを作っていましたが、だんだんと大きなものになっていき、絵画のようなもの、オブジェなど多岐にわたっていきました。

ある時期からは、「今ね、○○(遠方)まで彫金を習いに行ってるのよ。作品の幅を広げるためにね~」なんて楽しそうに言っていました。

それからしばらくして、展覧会にも出品して賞もいくつかもらっていて、個展を開くまでに。

そんな母を心から「かっこいい」と思っていたし、
こんな趣味があるなら、この後もずっと続けていくんだろうなぁ、母の老後は安心、と思っていました。

それなのに、、、

なぜ趣味を辞めるのか?背景にあるサイン

あの頃の私は、なんで辞めてしまったんだろう?と思いはしたものの、深く考えれることはありませんでした。

まぁ、最初から10年とか言っていたしなぁくらいにしか思っていませんでした。

でも今になって調べてみると、そういうことか~と納得することが多かったので、知っていたらまた接し方も違っていたのかなと思い少し後悔しています。

ここでは私が調べたことを記載しておきます。

アパシー(無気力・意欲低下)

アパシーとは、趣味への興味や喜びを感じにくくなることを言います。
認知症の初期症状としても知られています。

脳の前頭連合野や線条体など、動機づけに関わる部位のダメージで生じると考えられています 。

認知機能の衰え

記憶力や計画力の低下により、趣味に必要な手順や道具の所在を思い出せなくなり、準備や片づけが困難になります。

実際、認知機能が落ちると活動への参加頻度が激減するとの研究報告があります

身体的制約の増大

関節痛や筋力低下、視力・聴力の衰えなど身体的な不調があると、立ち作業や細かな手仕事、外出を伴う趣味がつらくなり、おのずとやめてしまうことがあります 。

判断力・実行機能の低下

TPOに合った道具選びや作業の順序判断が難しくなり、「どれを使えばいいかわからない」「次に何をすればいいか思いつかない」と感じることで、趣味を続けるハードルが上がります 。

不安・自己効力感の低下

以前のように上手くできないことで挫折感や不安を抱き、「失敗したくない」という気持ちから最初から手をつけなくなるケースも報告されています。

社会的孤立

同じ趣味仲間と会う機会が減ると交流の楽しさが薄れ、一緒に続けるモチベーションが低下します。

社会的つながりは趣味継続の大きな原動力であることが示唆されています

うつ症状との重複

アパシーと似通った「うつ症状」も、気分の落ち込みや楽しみの喪失(快楽棄損)を引き起こし、趣味をやめる要因となります。

*これらの要因は単独ではなく複合的に作用し、高齢者がかつての趣味を手放す背景となります。

見守りのヒント:趣味との関わりを自然に支えるには

うちの場合は、一緒に住んでいなかったこともあり、辞める気配すら気づかず、辞めたことを後から聞いたというのが実際のところです。

でも、もう少し注意深く接して見守っていたら違っていたところもあるのでは?と思ったりします。

「大好きだった趣味を辞めてしまう」ことに気づいたとき、家族としてどんな風に寄り添えばよいか、、

無理なく自然にできる「見守りのヒント」をいくつかご紹介します。

無理に再開を迫らない

趣味をやめてしまった理由は人それぞれで、体力や気力の変化、環境の変化が背景にあることも。

「せっかく好きだったのに、なんでやめたの?」と問い詰めるよりも、本人のペースや気持ちを尊重する姿勢が大切かも。

楽しさの記憶を

昔の写真や作品を一緒に見返し、「この作品、ほんと素敵だよね」「あのとき一緒に展示会に行ったよね」など、楽しかった思い出をそっと引き出してみましょう。

昔の喜びが心に残っていることを実感できれば、「ちょっと触ってみようかな」という意欲につながるかもしれません。

昔の写真や映像、作品などを一緒に見返して、楽しかった思い出をそっと引き出してみることもありかと思います。

「一緒にあの時のビデオ見ようよ。これはいつの舞台?」
「この写真、○年前の作品だよね。こんな作品作るなんすごいねてやっぱりすごいね」
「この時、一緒に展示会行ったよね〜覚えてる?」

といったさりげない会話が、昔の楽しかった記憶を刺激し、やる気を取り戻すきっかけになることもあるようです。

“ゆるく続ける”方法を一緒に考える

趣味を以前と同じ形で続けるのが難しくても、「できる形」で趣味と関わり続ける選択肢もあります。

*道具を使いやすく工夫する(重いものを軽くする、手順を簡略化する)
*仲間との交流を優先して外出をサポートする
*好きなものに触れる機会をつくる(展示を一緒に見に行く、動画で見る)

といった工夫で、続けやすい環境を整えます。

無理なくできる範囲なら、「またやってみようかな」とハードルが下がります。

新しい趣味との出会いを提案する

過去の趣味にこだわらず、「これ、ちょっとやってみない?」と軽い気持ちで新しいことに誘ってみるのもひとつの方法。

身近な教室の参加チケットやオンライン動画など、気軽に始められるものを選ぶと、「やってみようかな?」のきっかけになります。

また「誰かと一緒にできる」「話しながらできる」ような趣味は、精神的な充足感にもつながりやすいようです。

変化を記録しておく

趣味をやめた」と気づいた時点から、メモに残しておくと、後から変化の流れを整理しやすくなり、必要な支援のタイミングもつかみやすくなります。

*いつ頃からやらなくなったか
*どんなきっかけがあったのか
*本人がどう話していたか

遠距離であればLINEやメールで簡単に記録を共有し、家族で情報を集めておくと安心です。

「本人にとっての大切さ」を忘れない

私たちが思っている以上に、趣味はその人の「生きがい」や「自信」に深く結びついていると思います。

失ってしまったことを悲しむだけでなく、「その趣味を大切にしてきたこと」を認め、共感し続けることが、心のケアにつながるのではないでしょうか。

まとめ:趣味を通じて気づく、小さな変化の意味

  • 大切なのは「問い詰めない」こと
    やめてしまった理由は体力の変化や気持ちの揺らぎなど人それぞれ。まずは本人のペースと気持ちを尊重しましょう。
  • 楽しさの記憶をそっと呼び起こす
    写真や作品を一緒に見返し、かつての喜びを思い出す声かけが、再び趣味に向かうきっかけになります。
  • “ゆるく続ける”アイデアを一緒に考える
    道具の工夫や作業の簡略化など、小さな支援でハードルを下げると、無理なく趣味と関わり続けられます。
  • 新しい趣味への扉も開いてみる
    過去の趣味にこだわらず、気軽に始められる新しい楽しみを提案するのも一つの方法です。
  • 記録と情報共有を忘れずに
    「いつ」「どんな変化があったか」をメモし、遠距離でもLINEやメールで家族と共有すると、次の一歩が踏み出しやすくなります。

趣味は本人の「生きがい」や「自信」を映す鏡。小さな違和感を見逃さず、寄り添いの方法を一緒に考えることで、離れていても支え合える関係を築いていきましょう。

次は、もっと生活の安全に関わるサイン「運転免許返納」について書きたいと思います。